2023年10月

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【レーザ】エキシマレーザ

概要

エキシマレーザーとは Excited Dimer Laser の略称で、強い紫外領域のレーザーが得られることが特徴です。CO2レーザーなどの赤外線レーザーと異なり熱を発生しないため、より鋭利で微細な加工が可能となります。樹脂に対しては、化学的な結合を切ることで加工を実現できます。

 特徴・応用例

高気圧下におけるエキシマレーザーの生成効率は高く、紫外線レーザーとしては例外的に高い発振効率を示すレーザーです。

発振波長は、ガスの成分で異なります。KrF で 248 nm、XeCl で 308 nm、ArF で 193 nmです。また、パルスレーザーとして動作し、典型的な例では、パルス幅数ns、尖頭出力数 MW の高繰り返し出力が容易に得られます。

平均出力も大きいため、光化学や紫外分光の光源として利用されています。さらに、芳香族環など DNA の吸収を利用する医学分野への応用や、最近では半導体の微細加工用に回路パターンを転写する光学系の光源として、さらに数 pm に狭帯域化することで色収差を防ぐ技術などが工業化されています。

原理

チャンバー(膨張室)内にハロゲン、希ガス(Kr、Ar、Xe等)、バッファー(Ne、He等)の混合ガスを封入した状態で、放電を行います。すると電気の力で励起(Excited)されて、レア・ハロゲン二量体が生成(Dimer)されます。この状態は不安定のため、基底状態である本来のレアとハロゲンの形に速やかに移行します。その際、電気で得たエネルギーを紫外光に変換して放出します。これがエキシマレーザーの原理です。

通常の発振では、放電 1 回につき 1 回しか発信されませんが、連続して放電を繰り返すことによって、ある程度連続したレーザー出力を得ることができます。封入するガスであるレア・ハロゲンの組み合わせにより、得られるレーザー波長が変わります。基本的には波長が短いほどレーザーのエネルギーは強くなり、より微細な加工が可能となります。

参考

1. エキシマレーザーとは?
2. エキシマレーザー(excimer laser) – Produced by 光響

【加工】光学レンズの種類

概要

レーザーなどで光を集めたり、拡散させるために使われる光学レンズ。光学レンズとは光学ガラスから作られる、カメラ、顕微鏡、望遠鏡などで広く使用されています。特に産業界では、高精度・高品質なレンズが多く使われています。民生品でも、特に高額なカメラや望遠鏡などでは、高性能なレンズが使われています。

この光学レンズには、球面レンズ、非球面レンズ、屈折率分布レンズ、特殊形状レンズの大きく 4 つの種類があります。

特徴

各レンズの特徴を見ていきます。

球面レンズは、最も基本的な表面が球形状をしたレンズです。メガネなどにも用いられ、その形は球面状のカーブを描いており、中央部分と周辺部で見え方に差があります。最も綺麗に見える箇所は中心部分で、中心部分から離れるほど歪んで見えるようになってしまいます。これを収差といいます。さらに、強度(高い集光にするほど)になるほど厚みも出てしまいます。

非球面レンズは、このような球面レンズのデメリットを解決したレンズで、球面収差をなくすために、レンズカーブが高次非球面形状に設計されています。周辺部の歪みが少なく、クリアで快適な視界を得ることができ、さらに球面レンズよりも薄くて軽いのが特徴です。収差を抑えることができますが、その分、加工に技術が必要で、一般的に高価です。

屈折率分布レンズは、光軸方向と直交方向に材料内部の屈折率を変化させたレンズで、空気とレンズの屈折率の違いを利用せず、レンズ内の屈折率差を利用するため、一般レンズと異なる形状が可能となります。代表例としては、光ファイバなどに用いられます。

特殊形状レンズは、光を一方向のみに集光するため、レーザ光を細く集光したり、シート状の光の形成が可能となります。市リンドリカルレンズ等が相当します。

構成

レンズを複数枚組み合わせて、より所望の集光、拡散特性を生み出す組み合わせレンズという構成があります。

光学レンズの組み合わせでは。屈折率、分散率の異なる光学ガラスの組み合わせや、球面曲率の違うレンズの組み合わせで様々な特性を実現します。例えば写真レンズには、前後に同じ組み合わせのレンズを配した対称型と、異なる組み合わせのレンズを配置する非対称型があります。色収差や球面収差、コマ収差、非点収差、像の歪みなど、レンズ固有の欠点を最小化し、画像の鮮明化をはかることを目的としています。収差が大きいと像がぼけたりゆがんだりします。

さいごに

レンズは、光を集めたり、広げたりと重要な役割を果たしています。我々の身の回りにもたくさん使われていますが、たいへん奥が深い部品です。

参考

【加工】電子部品の微細レーザー溶接

はじめに

電子部品の微細レーザー溶接は、微細な部品や材料を高精度で接合するための技術です。このプロセスは、レーザー光を使用して熱源を提供し、被溶接部材の一点に熱を集中させて加熱することで材料を溶かして、接合を行います。電子機器の製造や微細機械部品の組み立てでは、この技術が広く使用されています。

電子部品の微細レーザー溶接

原理

以下に、微細レーザー溶接の基本的な要点を説明します。

レーザー光源 : 微細レーザー溶接には、通常Nd:YAGレーザーやファイバーレーザーなどの高出力レーザーが使用されます。これらのレーザーは、高エネルギーの光を非常に小さなスポットサイズに集中できるため、微細な溶接に適しています。

光吸収 : 溶接を行う材料は、使用するレーザー光の波長によって異なる吸収特性を持ちます。適切な波長を選ぶことで、被溶接材料が効果的に加熱されることが保証されます。金属材料では、532nm,  355nm などを用いると、効率的です。

スポットサイズとエネルギー制御 : レーザービームのフォーカスを微細に調整することで、狭い範囲に高エネルギーを供給できます。これにより、微細な部品や接合部を精密に溶かすことができます。光学系や使用するレーザー波長によりますが、数十µm程度の微細スポットを実現することもできます。

溶融と冷却 : レーザー光によって被溶接部材が溶けた後、冷却が必要です。適切な冷却方法を使用して急速に冷却することで、材料が正しく結合し、強度が確保されます。酸化を防ぐ効果も含めて、アルゴンガスや窒素ガスで冷却することもあります。

制御と自動化 : レーザー溶接は高度な制御と位置決めが必要です。ロボットアームやコンピュータ制御システムを使用して、正確な位置合わせとレーザービームの照射を行うことができます。ビームの走査は、溶接加工条件と上手くマッチングさせる必要があり、非常に重要な要素です。特に立体的な材料に対しては、ビームの走査が難しいですが、センサを組み合わせることで高精度に制御する試みもなされています。

具体例

以下には電子部品のレーザー微細溶接の具体例を列挙します。

チップ実装 : 電子基板上にある微細なチップ(半導体デバイス)を接続する際に使用されます。例えば、マイクロプロセッサやメモリチップを基板に接続するために、微細レーザー溶接が用いられます。はんだ付けの場合もあります。

導線接続 : 電子回路内の導線を接続する際に使用されます。微細な導線を正確に位置合わせし、高精度で接続することが可能です。

電子部品の固定 : 電子部品同士を正確に位置合わせして固定するために使用されます。例えば、スイッチやセンサーなどの微細な部品を基板に確実に固定する際に利用されます。

電極接合 : 電子デバイス内の異なる部品間で電気的な接続を行う際に使用されます。例えば、電池やキャパシタなどの電極を接続する際に微細レーザー溶接が適用されます。最近では、特にEV用の電池の接合に多用されています。

封止 : 電子部品を保護するために、微細な封止やカプセル化を行う際に使用されます。このプロセスにより、部品が外部からの影響を受けにくくなります。特に小さい部品の時には、微細レーザー溶接が有効です。

フィラメント接続 : フィラメントや微細な配線を電子部品に接続する際に使用されます。高精度な接続が要求される場面で利用されます。

センサーの組み立て : 高精度なセンサーの組み立てや微細な部品の接続に使用されます。例えば、温度センサーや圧力センサーなどの製造プロセスで微細レーザー溶接が利用されます。

さいごに

このように微細レーザー溶接は、電子機器の製造や組み立てにおいて広く使われており、高い精度と信頼性持っています。今後、様々なレーザーが開発され、活躍の範囲がさらに広がりそうです。

【レーザー】医療機器の進化に寄与する微細レーザー技術

はじめに

医療機器の進化は、近年の技術の発展によって驚くべき成果を上げています。その中でも、微細レーザー技術は医療分野における重要な革新となっています。微細レーザー技術が医療機器の進化にどのように寄与、貢献しているかをまとめてみます。

レーザーの医療への応用

1.高精度な加工と微細な部品の製造:

    1. 微細レーザー技術は、その高い精度と確実な加工能力によって医療機器の製造に大きく貢献しています。例えば人工関節やインプラントデバイスなどの製造においては、微細な部位や複雑な構造を精密に加工することが求められます。スポット径が小さく、短時間に高いエネルギーで加工できる微細レーザー加工技術を用いることで、高い品質と信頼性を持つ部品が加工されます。それにより、高度な医療機器の製造が可能となり、患者の生活の質の向上に寄与します。

2.無痛治療と最小侵襲の実現:

    1. 微細レーザー技術は、医療機器の無痛治療と最小侵襲の実現にも大きく貢献しています。従来の手術方法では、大きな切開や侵襲が必要でしたが、微細レーザー技術を用いることで、非侵襲的な手術や治療が可能となります。これは、適切な波長を選択されたレーザー光は、組織にダメージを与えることなく、病変部位や細胞を破壊することができるためです。これにより、患者の回復期間が短縮され、合併症のリスクが減少します。

3.バイオセンサーとしての応用:

    1. 微細レーザー技術は、医療機器のバイオセンサーとしても重要な役割を果たしています。例えば、血液中の特定の成分や細胞の検査において、微細レーザー技術を使用することで、高感度かつ非侵襲的な検査が可能となります。レーザーの光を利用して、微細な変化や異常を検出することで、早期の病気の診断やモニタリングが可能となります。

さいごに

微細レーザー技術は、医療機器の進化において重要な役割を果たしています。その高精度な加工能力や無痛治療の実現、バイオセンサーとしての応用など、多岐にわたるメリットを提供しています。医療の未来をより良くするためには、微細レーザー技術のさらなる研究と開発が必要です。私たちの日常の健康と幸福に寄与する微細レーザー技術のさらなる進化に期待できます。

【レーザー】フェムト秒レーザー概要

概要

フェムト秒レーザーとは、フェムト(1×10-15)秒という極めて短いパルス幅をもつパルスレーザーであり、超短パルスレーザーとも呼ばれます。光は1秒間に約30万kmを進むほど高速でありますが、その光でさえも 1 フェムト秒の間には約0.3 μm程度しか進むことができません。このことからもフェムト秒レーザーがいかに短いパルス幅を有するかが分かります。

ここでは、このフェムト秒レーザーについて、その原理、メリットや応用例を示していきます。

原理

パルスレーザーの発振方法は、変調法、Qスイッチ法、モード同期法の3つに分けることができ、フェムト秒レーザーの発振にはモード同期法が用いられます。
フェムト秒レーザーを加工用に使用するためには、そのパルスエネルギーを増幅する必要がありますが、先述したようにフェムト秒レーザーはパルス幅が非常に短いため、パルスエネルギー/パルス幅で計算されるピーク出力が非常に高くなります。そのため、フェムト秒レーザーをそのまま増幅すると、光学媒質の破壊によりパルスのピーク出力が制限されてしまいます。これを防ぐために、フェムト秒レーザーを一旦ナノ秒レベルまで伸長し、その後増幅し、最後にフェムト秒までパルス圧縮する「CPA法」が用いられます。

メリット

1. ピークパワーの高さ

ピークパワーはパルスエネルギーをパルス幅で割った値で、ピークパワーが高いほど、短時間に高いエネルギー密度を材料に集中させることが可能です。これにより、熱の影響がほとんどない微細な加工が可能となります。フェムト秒レーザーは極めて短いパルス幅を持つため、必然的にそのピークパワーも高くなります。

2. 熱影響の最小化

一般的にレーザーを用いた加工は、切削工具による加工に比較して熱影響が大きく高精度の加工には不向きとされてきました。しかし、ピークパワーが高くエネルギーの局所的なに伝えることが可能なフェムト秒レーザーは、熱を材料に与える時間を極めて短くすることが出来ます。これにより、熱影響ゾーンを最小限にとどめ、熱応力や材料の変形を最小化することが出来ます。
さらに、最適な波長の選択や光学系の設計により、非常に微細なスポットのレーザーを集光でき、それによりさらに微細さ、高精度さを高めることができます。

3. 非接触性

フェムト秒レーザー溶接は非接触で行われるため、材料表面の損傷や汚染を最小限に抑えることができます。加工工具のような摩耗がないため、コスト削減、環境汚染低減にも役立ちます。また、直接的に力学的な力を加えないため、微細な部品やデリケートな構造への力学的な影響も少なくなります。

応用例

1. 異種材料の接合

フェムト秒レーザーはその高いエネルギー密度から異種材料の溶接も可能です。異種材料の溶接や接着は、特に航空宇宙産業のような高付加価値な部材を提供できる分野で、高精度な微細部品や複雑な構造を有する部品を形成することに役立ちます。

2. 高精度の孔加工

光のを高速・高精度に回転させるビームローテーターを用いることで、熱影響の影響がほとんどなく、形状精度の高い孔加工を実現することも可能です。さらにフェムト秒レーザーが出現する以前のCWないしロングパルスレーザーを含む従来の除去加工では、バリが発生し、再研磨加工などの追加工が必要でした。しかし、フェムト秒レーザーを用いた孔加工ではこのようなバリの発生はなく、再研磨の必要がないため作業工程を大幅に削減することが出来ます。

3. 精密切断

超短パルスレーザーの切断は他の熱によるレーザー切断のように、高速で厚板を切断するような作業には不向きですが、金属箔の精密切断などのように繊細な切断加工は、他の加工法に比較して安易かつより高精度の加工が可能です。

参考文献

  1. (光響製)フェムト秒レーザー 光源から産業用加工機まで
  2. 超短パルスレーザによる金属の微細加工と応用例

【マイクロ溶接】微細レーザー溶接を用いたジュエリー溶接: ロウ付けとの比較

ジュエリー溶接の概要

ネックレスやリング、ブローチなどの金属部分が折れたり切れてしまった場合には「溶接」という方法を用いて修理する事が可能です。本記事ではこれらの溶接方法としてよく用いられる、「微細レーザー溶接」と「ロウ付け」についてその解説と比較を紹介します。

微細レーザー溶接概要

微細レーザー溶接とは指向性や集中性の良い波長の光をレンズで集め、きわめて高いエネルギー密度のレーザー光を利用して行う微細な溶接のことを指します。

ロウ付けの概要

レーザー溶接と対照的にネックレスなどの溶接によく用いられる方法に「ロウ付け」があります。ここでいう「ロウ」とはロウソクのことではなく、金属の接合時に用いる合金のことを指します。ロウ付けではこのロウを溶融させることで、接着剤として金属の接合を可能とします。そのためここで使用するロウ(合金)は素材となる金属よりも融点の低いものを使用する必要があります。

宝石溶接におけるレーザー溶接の利点

  • 熱に弱い宝石を使用したジュエリーにも使用可能であること。宝石には熱に弱い特徴があるため、これを使用したジュエリーの溶接は宝石部に熱を与えないように行う必要があります。微細レーザー溶接は短時間に局所的に熱を加えるため熱影響が少ない溶接が可能出る事が特徴です。そのため、熱に弱い素材(宝石)を含むジュエリーの溶接も可能です。
  • 溶接材料として素材と同じ材料が使用可能なため、溶接部分が目立ちにくいこと
  • 溶接後の再研磨の必要がないこと。例えばシルバーの溶接にロウ付けを使用した場合、高温によりシルバーが白くなるため、再研磨の必要性が出てきます。
  • 極めて細かい箇所の溶接が可能であること微細溶接の名前の通り、ルーペを用いなければ見えないような細かい箇所の溶接も可能です。

デメリット

欠点がないかのように思われるレーザー溶接ですが、ロウ付けに比べて劣る点も存在します。

  • 見える範囲しか溶接する事ができないこと。ロウ付けの場合、例えばリング等の切断面にロウを流すことで、中心部などの見えない部分もしっかり接合することができます。一方で、レーザー溶接ではレーザーの照射ポイントしか溶接できず、中心部などの溶接は難しいため、強度面で劣ってしまう場合があります。
  • 技術者が少なく、技術の習得にも時間がかかること。レーザー溶接は高度な技術を要するため、技術の習得にはかなりの時間を要します。
  • 溶接機械が高価であること。
  • 加工コストが高いこと。

参考文献

  1. レーザー溶接って何?【クロムハーツの修理&カスタム情報】
  2. ロウ付けって何?【クロムハーツの修理&カスタム情報】

【マイクロ溶接】超短パルスレーザーを用いたガラスの微細溶接

ガラス加工のニーズ

ガラスは透明かつ化学的・物理的に安定であるため、多岐にわたる分野で使用される材料の1つです。ガラス部品の製造では多くの場合接合を必要とし、その精密さが製品の性能を大きく左右することも少なくありません。今回紹介する超短パルスレーザーを用いたガラス溶接以外にも、今まで様々な溶接方法が用いられてきましたが、その接合技術の向上は大きな課題となっています。

ガラス加工の難しさ

溶接で一般的に用いられる金属材料とは異なり、ガラス材料は多くの種類のレーザー光を透過する性質を有するため、レーザーを用いた加工は今まで難しいとされてきました。しかし後述する超短パルスレーザーの産業レベルでの実用化が成功し、ガラスを透過しないような極めて高いピークパワーを有するレーザー(超短パルスレーザー)での加工が可能となりました。実際にスマートフォンに使用される平面ガラスの切断では、超短パルスレーザー発信器が活用されています。

超短パルスレーザーの原理

超短パルスレーザーをガラス内部に強く照射すると、非線型プロセスによりレーザー強度の高い焦点付近でのみ吸収が発生し、ガラス表面付近では全く吸収されません。結果として、内部溶融が可能となります。部品の外表面に影響を与えることなく、接合すべき部分のみを洗濯して接合可能なこの方法は部品の構造設計の自由度を大幅に拡大します。

超短パルスレーザーによるガラス溶接のメリット

超短パルスレーザーによるガラス溶接の特徴はなんと言ってもガラスの平面度を阻害せずかつ、高強度での加工が可能な点にあります。これは接着の強さや耐久性、高い劣化耐性が要求される製品にとっては、不可欠な要素となります。

超短パルスレーザーによるガラス溶接のデメリット

欠点がないかのように思われる超短パルスレーザーですが、産業分野で実際に活用するためには大きな課題があります。それは加工スピードの問題です。超短パルスレーザーの加工スピードは10mm/秒程度であり、高速化のためにはさらなる高出力化や高繰り返し周波数化が必要となります。

レーザー以外のガラス接合

加工の難しいガラスの接合ですが、レーザーを用いた接合以外にもいくつかの接合方法が存在します。

接着剤による接合は、大掛かりな設備を必要としないメリットがある反面、長い硬化時間が必要、経年劣化、アウトガスの発生(周辺部材の劣化につながる)、などのデメリットがあります。

ロウ接では、ガラス基板より融点の低いガラス材を差込み、炉内で加熱することにより接着を可能とします。これには、接合強度・耐熱性の低さといったデメリットがあります。さらに、接着材とガラス基板の屈折率の違いにより、光学的応用に悪影響を与えてしまうのも特徴です。

オプティカル・コンタクトはガラス分子間に働くファンデルワールス力を利用した接合方法です。しかしながらその接合強度はガラス基板本来の材料強度よりも2桁劣ってしまいます。

拡散接合法は機械強度を保持したままの接合が可能ですが、高精度の接合面加工と高温下での長時間加熱を必要とし、実用性は極めて低いのが現状です。

CO2レーザーによるガラス溶接との比較

超短パルスレーザーの登場以前、レーザーを用いたガラスの溶接にはCO2レーザーが用いられていました。CO2 レーザーの波長は10.6μm であり、極めて高い吸収率でガラスに吸収されることで金属材料と同様の溶接が可能となります。しかし、CO2レーザーによるガラス溶接はレーザー照射時にガラス表面に発生する熱を利用した技術であるため、レーザー照射部及びその周辺が熱により変形し、ガラス材料の大きな特徴である平面度を維持する事が困難となってしまいます。IoT技術の発展に伴って部品の小型化・高密度化が進み、ガラスの高い平面度を活用した電子機器の必要性は年々高まっています。そのため、ガラス材料の平面度を阻害しない、超短パルスレーザーを用いたガラス溶接技術には大きな期待が高まっています。


 

参照

  

【加工】レンズの作り方

概要

多くの場合、レーザーはレンズを用いて集光されます。レーザー加工においては非常に重要なキーパーツです。ここでは、レーザー機器等で使用される光学レンズの製造工程を示します。

全体の流れ

以下に全体の流れを示します。
  1. ガラスの溶解
  2. ガラス切断、丸め
  3. 荒ずり
  4. 砂かけ
  5. 研磨
  6. 芯取り
  7. コーティング

製造工程

1. 溶解

まず、材料となる物質を混ぜて光学ガラスの溶解及び冷却を行います。用途ごとに適した透過率や屈折率となるように様々な材料を1300~1500度になるまで加熱して溶解します(溶解ガラス)。次に、型に移し、600℃ぐらいまで冷やされ、その後ゆっくりと2週間程度かけて冷却します。この時点では、白く曇ったガラスとなっています。 従来は、粘土製のるつぼで行われてきましたが、新種のガラスでは粘土を侵食する問題があったため、内部に白金をコーティングされたるつぼが開発されました。

2. 切断、丸め

冷却されたガラスは、必要な大きさのブロックに切断されて、外形を丸く削られます。

3. 荒ずり

ガラスの表面をレンズの球面にするために、カーブジェネレータ―と呼ばれる装置を使い形状を出していきます。ガラスを回転させて置き、カップ状の人工ダイヤモンド工具で、その角度を変化させながら目的の曲率(R)や厚みまで削ります。うまくRを付ける必要があり、重要な作業です。形状に誤差があると収差の原因となります。この時点でも、レンズは白く曇った状態です。

4. 砂かけ(精研削)

砂や人工ダイヤペレットを鋳物で出来ている皿状の治工具に貼り付け、仕様形状にしたがって荒ずり工程より細かく正確に削ります。より精密な研削を行うため、材料に合わせたダイヤの選定が必要なります。複数のレンズを同時に磨く方が効率がよく正確な球面となるため、多くのレンズをまとめて研削します。 この時点では、加工されたガラスは若干の透過がみられるようになりますが、まだすりガラス状となっています。

5. 研磨

レンズ表面を磨き上げます。ポリウレタンなどを貼った磨き皿と、酸化セリウムなどの研磨剤が利用されます。ポリウレタンパッドを貼り付け回転させ、酸化セリウムなどの研磨剤を流しながら、傷が無く、図面通りの面精度、中心厚になるよう磨き上げます。不適切な材料で研磨を行うと、レンズが傷だらけになったり、全体的にぼけたり、部分的に像を結ばないといった品質低下の原因となります。 この工程は最後の仕上げ工程ですので表面形状、粗さがサブミクロンオーダーの正確さで加工されます。 加工後のレンズは、曲率を確認するために原器と重ねてニュートンリングを観察して検査します。

6. 芯取り

レンズの表裏の曲率中心を結ぶ光軸を調整する最終的な工程です。レンズ外形が光軸に対して対称となるように加工します。 レンズの外径を真円に近づくように人工ダイヤモンドのホイールで削ります。レンズを両側から挟みこんで、表面の滑りを利用してレンズ中心を出すベルクランプ法が利用されます。このダイヤモンドホイールにも様々な形状があり、各レンズに選択します。

7. コーティング

最終工程であるコート工程では研磨後のレンズ表面に、反射防止の薄膜を蒸着させ、何層も重ねます。蒸着とは真空状態のチャンバー内で、化学物質をとばして成膜することです。反射があると、光の透過率が落ち、画像が暗くなったり、不要な像が出たりします。 単層コーティングでは、MgF2(フッ化マグネシウム)が使われます。多層膜は、様々な物質が利用されます。

歴史

光学レンズの作り方は約200年前にニュートンなどが改良し完成させた方法が、今でも基本的な原理となっています。 現在は、もっと高い精度のレンズを大量に安く作るように工夫されています。

参照

SHADOW溶接

背景

近年、電子部品の小型化が進み、それに伴って金属薄板接合の需要が高まっています。しかし、薄板は熱による変形が生じやすく、ギャップのコントロールも難しいという問題点があります。

一般に薄板の溶接にはパルスレーザが用いられますが、加熱と冷却の繰り返しや不適切なパラメータの設定により、試料が歪む可能性が高くなってしまいます。

これらの問題を解決するため、フラウンフォーファー・レーザ技術研究所はSHADOW溶接技術を開発しました。これは、高ピークパワーのパルスレーザーを高速で走査する技術で、試料の歪みを抑え、一般的なレーザー溶接の課題となる高反射率の材料溶接にも適応可能という特長があります。

 

概要

「SHADOW溶接技術」は、”Stepless High Accurate and Discreet One pulse Welding” のイニシャルをとったもので、連続溶接の長所とパルス溶接の長所を併せ持ち、微小部品の高精度溶接に適した技術です。ドイツのフラウンフォーファ研究所とレーザーメーカであるLASAG(現:Coherentグループ)の共同開発により生まれました。1パルスを高速で照射するため、パルスYAGレーザによる連続溶接と考えることもできます。

特徴

  •  パルス溶接と比較して、より滑らかな溶接ビードが形成可能なため、微小部品の溶接に非常に適しています。
  • 1パルスのみの溶接のため、微小部品への熱負荷を最小化することができます。
  • 高速度溶接なので、熱による歪は最小限にすることができます。
  • 連続溶接なので良好な溶接表面を得ることができます。

最後に

研究所とメーカが共同開発した技術で、理論的のみならず、実践的にも ” 使える ” 技術と言えそうです。微細化が進む分野では特に重要な技術となりそうです。

参考

レンズのクリーニング

はじめに

レーザー加工をしているとレーザーを集光するレンズが汚れることが多くあります。加工対象からのフュームだったり、そもそもの空気中の塵やほこりだったり、原因もさまざま。

このようにレンズが汚れるとレンズをクリーニングする必要があります。その方法等を説明します。

レンズクリーニングの必要性

レンズのクリーニングは必要でしょうか?汚れの程度にもよりますが、通常は必要です。できれば、クリーニングはしないことに越したことはありません。なぜなら、クリーニングしたと思っても逆に汚れを付着させたり、レンズを傷つける可能性があるためです。

レンズのクリーニングの必要性としては、以下があげられます。

  • レーザーの仕様効率を上げるため:レンズが汚れていると当然効率は落ちます。落ちても問題ない場合もありますが、通常は、エネルギーを多く消費するため、困ります。
  • レンズへの焼けの防止:レンズについた埃等の影響で、レンズが焼けたり、ゴミが付着して取れなくなることがあります。この場合には、レンズそのものの交換が必要になってしまいます。これを防ぐためにもレンズのクリーニングが必要です。
  • 加工条件の変化による加工品質の低下:加工対象物から見ると、照射されるレーザエネルギー等が変化してしまします。この場合、おなじように加工したつもりでも加工結果が変化してしまいます。このような加工品質の低下は大きな問題となります。

レンズクリーニング方法

レンズのクリーニングには、レンズクリーニング専用紙(レンズペーパー)とIPA(イソプロピルアルコール、イソプロパノール)を用います。

正方形のレンズペーパーの四隅をひとつにまとめて、指でつまんで軽く持ちます。レンズペーパーの中央部が膨らんだような状態となります。

このふくらみ部にIPAをつけます。

レンズペーパーの中心のふくらみを使って、レンズを拭いていきます。このふくらみ部をレンズ中心に軽く触れさせ、らせんを描くようにレンズ外周に向かってレンズのゴミをとっていきます。

レンズに強い力を加えないように注意します。

また、レンズペーパーが乾いた状態でレンズに接触させないようにします。レンズに傷がついてしまいます。

レンズ中心から、ゆっくりと螺旋を描きながらレンズ外側に向かってレンズ表面をなぞっていきます。最後は、レンズの端でレンズペーパーを止めることなく流れるようにレンズから離します。何度も往復せずに必ず一方向にだけ拭き進めます。

重要な点としては、必ず螺旋状に拭いていくことです。絶対に放射状に拭いてはいけません。筋ができてしまいます。

さいごに

繰り返しになりますが、レンズは、クリーニングしないのがベストです。どうしても必要な時だけクリーニングをします。可能であれば、レンズごと交換する方が良いです。クリーニングは上記の通り丁寧に行います。