2024年6月

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【技術】レーザースペックル血流速計

概要

レーザースペックル血流速計(Laser Speckle Blood Flowmetry)は、レーザー光のスペックルパターンを使用して血流速度を測定するための非侵襲的な技術です。この技術は、生体組織表面の微小な振動(スペックル)をモニタリングし、それに基づいて血流の速度を推定します。

歴史

レーザースペックル血流速計の原理は、1970年代に発見されましたが、実用化されたのはそれ以降のことです。1980年代から1990年代にかけて、この技術は生物医学研究の分野で急速に発展し、血流ダイナミクスの研究や臨床応用において重要なツールとなりました。

原理

レーザースペックル血流速計は、レーザー光を生体組織表面に照射し、散乱された光のスペックルパターンを観察します。血流が組織内を流れると、スペックルパターンに微小な変化が生じます。これは、血液細胞が移動することによるものです。この変化を分析することで、血流速度を推定します。

特徴

  • 非侵襲的: 生体組織の表面にレーザー光を照射するだけで血流速度を測定できます。
  • 高速: リアルタイムでの測定が可能であり、迅速な結果の取得が可能です。
  • 高い空間分解能: 微小な血管や組織の血流速度を高い精度で測定できます。

応用例

  • 臨床医学: 血流速度の変化は、循環障害や血管疾患などの疾患の診断や治療のモニタリングに使用されます。
  • 生理学研究: 血流速度の変化を測定することで、生理学的なプロセスや組織の機能を理解するための研究に貢献します。
  • 薬物開発: 薬物の血流への影響を評価するためのツールとして使用されます。

参考資料

【レーザー】量子カスケードレーザー

概要

量子カスケードレーザー(QCL)は、その名前が示す通り、量子力学のカスケード遷移を利用している。基本的な構成には、複数の量子井戸が含まれている。これらの量子井戸は、電子がエネルギー状態を段階的に遷移することで特定の波長の光が放出される。この独自の構造により、QCLは広範な波長帯域をカバーできる。

構成

量子カスケードレーザーは、特定の波長での高エネルギー光を生成するレーザーです。このレーザーの構成は、典型的には量子カスケード構造と呼ばれる半導体レーザー構造を使用します。以下に、量子カスケードレーザーの基本的な構成要素を説明します。

  1. 量子カスケード構造(Quantum Cascade Structure):
    • この構造は、複数の量子井戸(quantum well)とバリア層(barrier layer)から構成されます。
    • 量子井戸は、電子が束縛される空間であり、エネルギーバンドギャップがあるため、特定のエネルギー準位に電子が閉じ込められます。
    • バリア層は、量子井戸同士を区切り、電子の移動を制限します。
  2. 励起メカニズム:
    • 量子カスケードレーザーでは、電気的な励起が用いられます。電流を半導体構造に印加することで、量子井戸内の電子が励起されます。
    • 電子がエネルギーを放出する際、光が生成されます。この光の波長は、量子井戸の設計によって決まります。
  3. 反射面:
    • レーザー共振器内には、光が往復する反射面があります。これにより、光が複数回レーザー媒質を通過し、増幅されます。
  4. 光の取り出し:
    • 一部の量子カスケードレーザーでは、光が半導体の表面から直接出力されます。別のデバイスでは、外部の光導波路を使用して光を取り出します。
  5. 冷却:
    • 量子カスケードレーザーは高効率であるが、高エネルギーの光を生成するためには多くの電力が必要であり、熱を発生します。そのため、効果的な冷却システムが必要です。

これらの要素が組み合わさることで、量子カスケードレーザーが機能します。この種のレーザーは、分光分析、ガスセンシング、医療診断、およびセキュリティアプリケーションなど、さまざまな分野で利用されています。

特長

量子カスケードレーザーは、他の種類のレーザーと比較していくつかの特長があります。

  1. 波長可変性: 量子カスケードレーザーは、その設計によって生成される光の波長を調整することが可能です。この特性は、特定の分子や化合物の吸収線に合わせてレーザーの波長を調整し、分光分析やガスセンシングなどの応用に役立ちます。
  2. 高効率: 量子カスケードレーザーは、効率的な光の生成を実現するために設計されています。量子カスケード構造により、電子の励起と光の発生が効率的に行われます。
  3. 高出力: 量子カスケードレーザーは、比較的高い出力を実現することができます。これにより、長距離通信や高解像度イメージングなどのアプリケーションで有用です。
  4. 高い選択性: 量子カスケードレーザーは、特定の分子や化合物に対する高い選択性を持つことができます。これは、特定の吸収線に合わせてレーザーの波長を調整できるためです。
  5. 高い安定性: 量子カスケードレーザーは、一定の出力を維持することができる高い安定性を示すことがあります。これは、多くのアプリケーションで信頼性が求められる重要な特徴です。

これらの特長により、量子カスケードレーザーはさまざまな分野で広く利用されています。特に分光分析、ガスセンシング、医療診断、セキュリティなどの領域で重要な役割を果たしています。

歴史

量子カスケードレーザーは、比較的最近のレーザー技術の一つであり、その開発は20世紀末から21世紀初頭にかけて進展しました。以下に、量子カスケードレーザーの歴史の主要なマイルストーンを示します。

  1. 1994年: クライド・ケラー(Clyde G. Bethea)とフェルナンド・カプセレス(Fernando Capasso)による、量子カスケードレーザーの概念の最初の提案がなされました。彼らは、複数の量子井戸を使用して波長可変性を実現する方法を提案しました。
  2. 1997年: テキサス大学ダラス校のFernando Capasso率いる研究チームが、量子カスケードレーザーの最初の実証に成功しました。彼らは、GaInAs/AlInAsの量子カスケード構造を用いて、5ミクロン近傍でのレーザー発振を達成しました。
  3. 2000年代: この時期に、量子カスケードレーザーの研究が急速に進展しました。波長範囲が広がり、より高効率のデバイスが開発されました。
  4. 2006年: プリンストン大学のクレア・ケラー(Claire Gmachl)率いる研究グループが、3〜100ミクロンの広い波長範囲での量子カスケードレーザーの発光を実証しました。これにより、さらなる応用が可能となりました。
  5. 2010年代以降: この時期には、量子カスケードレーザーの応用が多岐にわたりました。ガスセンシング、分光分析、医療診断、セキュリティ、そして光通信などの分野で、その重要性が高まりました。

量子カスケードレーザーの発展には、半導体ナノテクノロジーの進歩やレーザー設計の改良が重要な役割を果たしています。今後も、この技術の進化がさらなる革新と応用の拡大につながることが期待されています。

参考

  1. “Quantum Cascade Lasers” (New Developments in the Science of Quantum Cascade Lasers) – Federico Capasso, Jerome Faist, Carlo Sirtori, Deborah L. Sivco, Albert L. Hutchinson, and Alfred Y. Cho. Springer, 1999.
    • この書籍は、量子カスケードレーザーの基礎から最新の応用まで幅広いトピックをカバーしています。有名な研究者による総説であり、この分野の理解を深めるのに非常に役立ちます。
  2. “Quantum Cascade Lasers” – Edited by Jerome Faist, Federico Capasso, Deborah Sivco, Carlo Sirtori, Albert Hutchinson, and Alfred Cho. Oxford University Press, 2013.
    • この書籍は、量子カスケードレーザーの最新の研究成果や技術動向に焦点を当てています。多数の著名な研究者による章で構成されており、詳細な情報と洞察を提供しています。
  3. “Quantum Cascade Lasers” – Edited by Jérôme Faist. Oxford University Press, 2020.
    • この書籍は、量子カスケードレーザーに関する最新の進展と応用に焦点を当てています。さまざまな著者による章が含まれており、レーザー技術の最新の動向に関する洞察を提供しています。

【レーザ】レーザー微細加工とは

レーザー微細加工が注目されています。ここでは、ごくごく一般的な解説をいたします。

レーザー微細加工とは?(当社での定義)

レーザーを用いて、微小な領域を除去加工し、穴あけ、切断、彫刻、マーキング等を行うこと。寸法のイメージとしては、1mm以下程度。最小は数µm程度。 特殊なレーザー、技術を使うことで、微小領域でも正確に加工ができます。レーザーの熱で形状が崩れてしまうこともありません。

どんな材料を加工できる?

基本的にどんな材料でも加工できます。金属、セラミック・ガラス、樹脂。加工品質は、材料や使用するレーザー加工装置によります。加工依頼で多い材料は金属です。 加工対象材料や加工内容により使用するレーザーや装置を適切に使い分け、高品質なレーザー加工を実現します。

どんなレーザーを使うか?

波長は450nm~10.6µm、発振方式はCWもしくはパルス、出力~1kWのさまざまなレーザーを所持しており、用途に応じて使い分けています。 熱影響の少ない高品質の加工には、ナノ秒レーザーやピコ秒レーザーのような短パルス/超短パルスレーザーを用います。

レーザーが適している加工

機械加工でできない小さな加工が得意です。例えば、φ0.1mm以下の微細な穴やバリのないシャープな切断、寸法精度の厳しい溝やスリット加工が得意です。

また、加工対象材料が弱く容易に壊れるような部材に対してもレーザー加工は適しています。非接触で非常に弱い力で加工しますので、対象材料に無理な力が加わりません。

一方で、刃物で加工しにくい材料に対しても有効です。例えば、タングステンのような硬い材料に対しては、機械加工で問題となる工具の摩耗・損傷がレーザーでは発生しないために、経済的です。

レーザーでできる加工

  • 穴あけ
  • 切断
  • 溝・スリット加工
  • マーキング
  • 内部改質(光学的に透明な物質)
  • 溶接

レーザー穴加工の特徴

・穴はテーパーになる。入射側が大きく、出射側が小さい。 (特殊な光学系をつかうとテーパーを制御できる)

・止め孔加工の場合、アスペクト比が(入射穴径):(穴深さ)=1:4~1:6 程度となる

レーザーのメリット

  • 非接触加工のため、加工対象に無理な力が加わらない。工具の摩耗がない
  • レーザーは、数µm程度まで小さく絞ることができるため、微細な加工ができる。
  • 高速な加工。ガルバノスキャナで高速にレーザーを走査できる。
  • 同じレーザーでもパラメータを変えることで、加工結果を大きく変えることができる。

レーザーの制限

  • 熱の影響が出る場合がある。ドロスや変色など熱により材料が変化する場合がある。
  • 初期コストが高い。レーザー加工機は、安くはないので、導入するときにはコストメリットが見込まれる必要がある。一方、消耗品が少ないのでランニングコストは高くない。
  • レーザーパラメータの設定が難しい。高精度な加工をするためには、試行錯誤を繰り返しパラメータを設定する必要がある。
  • 機械加工に比べて精度が悪い。機械加工のように工具の形状転写ではなく、いわゆるエッチング加工なので、精度がでにくい。

【技術】研磨加工のお話し(その2)

続:ピッチポリッシャー

ピッチポリッシャーについてもう少し掘り下げてみます。

ピッチは高温で液体状になり常温では固体化する特徴があります。その温度に対する敏感さや硬さは、それぞれのピッチでも特徴があり、同種のピッチの中でも硬さ別に分けて管理されていることがほとんどです。
又、常温で固形状態になっているピッチは瞬間的な力には硬く、ゆっくりと荷重をかけると、徐々に変形してゆく特徴があり、この変形が、面転写の研磨加工では都合の良い特徴とも言えると同時に制御性の悪い弱点とも言えます。

ピッチの種類

研磨加工で使用されるピッチには大まかに3種類あります。

  • アスファルトピッチ
  • ウッドピッチ
  • タールピッチ

アスファルトピッチは石油を精製するときの副産物で舗装道路などで使用されていることが一般的に知られている物です。ピッチの特徴でもあるゆっくりと変形する特徴は、渋滞の多いアスファルト舗装道路の「ワダチ」となりやすいことからもイメージがつきやすいです。

ウッドピッチはアスファルトピッチと比較して熱に対して敏感な印象です。

タールピッチはタールの配合量で硬さが変化する特徴があります。(個人的主観も含みます)用途に応じて使い分けることもありますが、管理も大変なので、アスファルトピッチが多い印象です。(職人の好みも含まれます)

研磨機

これらのピッチポリッシャーは、概ねオスカー式研磨機で使用されます。オスカー式研磨機を言葉で説明すると、「回転するポリッシャー(またはワーク)に円心揺動するアームの先にワーク(またはポリッシャー)を取り付けることで、ワーク(ポリッシャー)が連れ回り、研磨剤を介することで加工が進む研磨方式」と言えますが、分かりにくいと思いますので、深堀はしません。

このオスカー式研磨機は、ガリレオが望遠鏡のレンズを磨いた研磨機と言われており、動力源が変わったこと以外、基本的な機構は現在でもほとんど変わっていないようです。

【技術】研磨加工のお話し

研磨加工の歴史

研磨加工の歴史は古く、1万年前の新石器時代まで遡ることができます。
旧石器時代は石などを割ったり砕いたりして、具合の良い形状を選択して使用していたとされています。新石器時代になると、この石器を石や砂利などにこすりつけて、表面を滑らかにして、より鋭利な刃物として加工したことが研磨のルーツと言われています。
その後もメノウの勾玉や管玉など装飾品、青銅の鏡、ガリレオのレンズやニュートンの反射鏡などなど研磨技術は続いていきます。

現在に至っても、光学部品はもとより電子、機械分野でも幅広く活用されています。対象材料も多様で金属をはじめ、ガラスなどの脆性材、樹脂やセラミックに至るまで用途に応じた研磨加工が行われています。

ピッチポリッシャー

ここでは古くから使用されている遊離砥粒を使用したピッチポリッシャー研磨についてお話をします。

ピッチ研磨は古代から知られており、ガラスや宝石を磨くために使用されていました。現在でも高精度加工用としてピッチ研磨は活躍しております。

ガラスなどの脆性材を研磨加工する場合、加工面の仕上がり状態で二分することができます。
一つは表面を滑らかな凹凸の少ないラップ加工(lapping)職人たちは砂かけと呼びます。この加工では表面は曇りガラスの仕上がりになります、職人言葉では砂目や梨地ともいわれます。

一方で鏡面(透明)になる研磨加工(polishing)と言い分けており、波長レベルの高精度研磨面は光学研磨ともいわれます。

このように仕上がり表面での違いがありますが、ともに研磨加工と呼ばれます。

研磨加工の要素

その昔、研磨加工は人の手や動物の皮などを使い研磨加工を行っておりました。
研磨加工を行うための3要素として

  • 研磨剤(研磨材)…磨き粉(砥粒)
  • 研磨工具…定盤、バフ、ポリッシャー
  • 研磨対象物…各種材料(金属、ガラス等)

があげられます。

研磨剤は砥粒とも呼ばれ、独立した砥粒を遊離砥粒、固形物になったものを固定砥粒と呼ばれています。遊離砥粒加工で使用される研磨剤は液体状になっていることが多く研磨スラリーや研磨液と呼ばれます。
一方、研磨剤が固形成形されたものは、固定砥粒加工と言われ、研削(研磨)砥石や研磨ペレットという名称で呼ばれます。

砥石を使った加工は研削機械加工と言われて、金属などを砥石で鏡面化する場合などは、研削研磨加工と言われる場合もあります。砥石を使った機械研削加工は制御性が良く、高精度加工に向いています。

一方で、流離砥粒を使用した研磨加工は、加工速度も遅く、制御性はあまりよくありません。特にピッチポリッシャーを使用した場合は、加工技術者の高い熟練度が必要となります。しかしその仕上がりは非常に緻密な高精度研磨加工が可能で、現在に至っても使用されることがあります。